今月も発売と同時に「文芸春秋」9月特別号を買ってきた。
前回の芥川賞は川上未映子「乳と卵」だった。 読後の感想は女性特有の感じ方の文章に思えた。
今回の受賞者も女性であるが中国人女性である。
而も「天安門事件」を扱っている。
「天安門事件」は1989年に起きた。
物語の前半は、やっと難関を突破して入学できた地方の大学の学生が、若い教授が進める民主化運動に参加。 この運動が天安門へと合流してゆく。しかし、この運動は挫折してしまうが、リードしてきた若い教授やリーダーと思しき学生は外国へ亡命する。 残された参加学生たちは「自暴自棄」になり、酒の上で市民とのの事件を起こして傷害で逮捕された挙句、退学処分になる。
後半は、挫折した若者がどん底から這い上がって行く状況と、かっての教授への想いと再会が綴られている。 読後の感想としては、 やっと難関を突破した「無知な田舎出の学生」が革命の名のもとに運動趣旨も能く理解せずに参加したが時の権力につぶされて挫折した。
彼らを運動に駆り立てた若い教師やリーダーたちは彼らを捨てて海外に亡命した。 亡命した彼らを恨むこともなく、退学して出身地にも帰れないで労働者として転落して苦労して這い上がってくる若者たち。
現在「蟹工船」がたくさん読まれているようだが、比較すると問題の掘り下げが不足しているように感じた。
作者がインタビューで、
「日本人はみな真面目で、何でも重く受け止めすぎますね。もっと楽観的で、無神経にならないと生きていくのが難しいところもあるんじゃないでしょうか。」 と語っているのが印象に残った。
雑誌では石原新太郎氏など「選考委員の選評」が最初にあるが私は「作品」を先に読むことにしている。
その後、作者へのインタビュー記事、最後に「選評」を読む。 変な雑念を入れないためだ。
このころ私は香港を拠点にして広州近辺の小さな町(鎮)で合鎮工場(町との合弁会社)立ち上げに参加していた。
「天安門事件」を批判するため、香港の全てのタクシーは カー・ラジオ用のアンテナの先端に「黄色のリボン」をつけて走っていた。
しかし、われわれ日本人滞在者は、一歩本土に入ると この件を口にすることはなかった。